『チョコラタ』は2018年版『Come On A My House』だ

チョコラタを聴くと、涙さえ込み上げてくる。Hey!Say!JUMP 11年目の実力とそれに裏打ちされた自信が、この都会的で洗練された一曲に詰まっているからだ。

 

2013年、『Come On A My House』がHey!Say!JUMPへの担降り推奨ソングであると俄かに話題になった。二人称である「君」はそもそも「彼だけ見つめてる」状態であり、曲の一人称である「僕」は絶賛片想い中なのだが、「僕」は「もっと君を知りたい もっと君に触れたい」という想いのままに、「君」を家に招待する。「彼」よりも、きっと「僕」の方が「君のことを誰より笑顔にできるから」という口説き文句の下、「彼」が好き?「僕」が好き?「本当は誰が好きなの?」と「君」に揺さぶりをかけてくる。最後は華麗にダンスをして高く空へと舞い上がってしまう訳だが、これはHey!Say!JUMPが美しい群舞を自グループの強みにし始めたことの表れだろうか。

とにかく、歌詞の内容がまるで「他グループから自グループへの担降りを推奨している」ようにも捉えられたことと、実際に曲を歌って踊るJUMPが信じられないくらい可愛くてつい見入ってしまう(メンバー全員が成人を迎える年だったにも関わらず)ことから、ジャニオタ界隈では色々な意味で話題になったのだった。

歌詞を深読みしすぎではないか?と思われるかもしれない。しかし当時は矢印ドームの客席が風船で埋められていた時代、山田涼介が「お願いです、僕達から離れないでください」と切実な言葉を口にした時代だ。そんな時期にリリースされたシングル『Come On A My House』に、何らかの想いが込められていると考えても不思議ではなかった。

 

そして、『チョコラタ』。Hey!Say!JUMPらしい、地に足のついた素晴らしい10周年イヤーを終え、年明け2018年の第一弾シングルとして発売された『マエヲムケ』のカップリング曲。

「チョコラタ」という囁きのあと、トランペットの効いた、どこかジャズのようなモダンなテイストでイントロは始まる。小気味良いメロディを味わっていると、まるで音の一部であるかのように歌われる「Tasty CHOCOLATTA」で一気に心を鷲掴みにされる。チョコレートのように濃厚で甘く、蕩けるように舌触りの良い声。裏返る寸前で引き戻す歌声の官能。伊野尾さんの声質を最大限に活かしたパートの采配は天才としか言いようがない。そしてまさか自らをチョコレート、と形容するとは思わなかった。この比喩も、後の歌詞でぐうの音も出ないくらい納得させられる。

「今日は誰の唇(くち)で溶けようか」という髙木くんの歌い出しに痺れた。今のHey!Say!JUMPは、なかなか振り向いてくれない片想いの相手を懸命に追いかけるような存在ではない。不特定多数の存在に消費され、それでいて虜にして離さない、まさに黒いスーツを身に纏うチョコレートなのだ。「お気に召すままボクらを選んでいい あなたにあう味ご用意しています」という歌詞からもHey!Say!JUMPメンバーのそれぞれが魅力を持った存在であり、一たび口に入れれば気になるメンバーが見つかるはず、という自信が感じられる。

「愛してくれますか?」と聞いてくるその癖、我々には拒否権などない。「お口にあいましたか? もっとTasting」 と誘われるがまま、9人の異なる味わいを口の中へと流し込まれ、暴力的なまでに我々を奪い去っていく。

また、二番の出だし、有岡くんの「味を変えて白いシャツなんてどう?」というパートもたまらなく痺れる。一番でスーツ姿をカカオに見立てたならば、今度はシャツでホワイトチョコに見立ててくるとは。何より有岡くんには、白いシャツが似合う。

そしてトドメは山田涼介の「僕を食べて」だ。あまりにダイレクトすぎる。しかし山田くんの、命を削るように自らを消費し尽くさせようとする、天命とも呼ぶべきアイドル性が、不思議な説得力を与えているのだ。

 

この『チョコラタ』、数年前ならばこれほど魅力的には歌えなかっただろう。10周年を終え、自分たちのパフォーマンスや仕事の内容、グループの方向性に確かな自信を持ち始めた彼らだからこそ、こんなにも歌詞に魂が宿る。

これを「担降り推奨ソング」と呼ぶには少々行き過ぎているようにも思われる。しかしデビュー11年目を迎え、正統派アイドルとしての軸はそのままに、ますます大人としての魅力に磨きがかかる今のHey!Say!JUMPが人々を釘付けにし虜にする、そんな2018年版『Come On A My House』と捉えるのはどうだろうか。

 

 

何が言いたいかというと、『チョコラタ』は色んな方面の琴線に触れるので何かの機会に絶対踊ってね、願わくば今年のツアーのセトリに入れてねということです運営各位!